口腔ケアの基礎知識

歯ブラシを持って歯を磨く。口腔ケアの基本はここにあります。ただ口腔ケアの目的は虫歯や歯周病の予防だけではありません。ウイルス感染を防いだり、肺炎を予防するといった役割もあります。


お口の粘膜はもともとウイルスの侵入を防ぐ働きを持っていますが、お口の中の汚れ(細菌)がその働きを阻害してしまうと言われています。口腔ケアのコロナウイルスに対する効果はまだ明確ではありませんが、インフルエンザでは感染を防ぐ効果が証明されています。

ただお口の粘膜はおなかの中の腸とおなじで、常在菌がいてバランスをとっています。そのため殺菌成分の入ったうがい薬などを使い続けるのはお勧めできません。”機械的”にお掃除することでマイルドに菌を減らすのが粘膜にとってちょうどいいのです。

通常6歳前後に最初の永久歯(一般に6歳臼歯と呼ばれる第一大臼歯)が出てきますが、この時期はとくに口腔ケアに気を付ける必要があります。萌出直後の歯の表面は凹凸が大きいため非常に汚れが溜まり易くなっています。またムシ歯菌の出す酸に対する抵抗力も弱い状態です。歯と歯ぐきの境目や歯と歯の間、かみ合わせ面の溝の部分などに気を付けて、仕上げ磨きをしてあげてください。必要に応じて歯の溝を埋めて汚れが溜まらないようにする”フィッシャーシーラント”やフッ素の塗布を行います。

高齢になってくると、服用する薬剤の影響もあり、口の中が乾きやすくなります。そうすると粘膜が傷つきやすくなったり、味を感じにくくなります。さらに唾液は潤滑材の役割をもっているのでお話がしずらくなったり、食べ物を口の中でまとめたり、飲み込みにも影響が出てきます。対策として意識的に水分を取るようにし、唾液腺マッサージを行ったり、重度の場合は保湿剤や人工唾液を使用することもあります。まれにシェーグレン症候群のように病気が原因で唾液が少なくなる場合もあります。

寝たきりの方に口腔ケアの介助をされる場合は、口腔ケアがお口の機能に良い刺激となります。お掃除と同時に適度にほっぺた、舌などをうごかしたり、さすったり、心地よい刺激を与えることがお口の機能が低下するのを防ぐ効果があるとされています。ただお掃除の際にお口に溜まった汚れた水分を誤嚥させないようにしてください。水を口の中に貯められない方は体位を横にして、洗面器を置き、口から水が自然に流れるようにするか、専用の吸引器を使用しながら行うようにします。